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エジプトのジプシー

先日、木村聡さんというフォトジャーナリストの方が、「エジプトのスラムについて知りたい」と私のところにいらっしゃいました。私はかつて、エジプトのとあるスラムについて講演したことがあり、その関係で私がスラムの専門家(?)だと思ってらっしゃる方がちらほらいらっしゃるのですが・・・全然違います(汗)。

木村さんはスラムというよりは、スラムに住んでいるとされている「ジプシー(ロマ)」についてお知りになりたかったようですが、私は「エジプトのジプシー」と聞いて「はて?」と考え込んでしまったくらい全く知識がなく、その点で全く木村さんのお役に立てなかったのですが、ちょっと調べてみたところ、面白いことがいろいろわかりました。

まずは名称ですが、エジプトではジプシーのことをハナーグラهناجرة、ハンガラニーヤهنجرانيةとよぶそうで、その他にガガルغجرという呼び方もあるようです。またかつてエジプトのジプシーは歌舞音曲に関わる仕事に多く携わっていたようで、その名残から、ジプシー風のベリーダンス(ラクス・シャルキー)のことをガワーズィーغوازيと言ったりするそうです。ただし、現在のエジプトのジプシーは完全に「窃盗集団」のようで、いわゆるオリエンタルムードたっぷりの踊り子、みたいな存在は皆無のようです。

またジプシーはジプシーとしか結婚してはならないという掟があるようなのですが、写真を見る限り、「普通のエジプト人」にしか見えず、外見で判別するのは難しい・・・というか無理かと思います。

エジプトのジプシーは、例えばこんな感じ。

han2_l.jpg

これは暴行、殺人の罪で逮捕されたジプシーの一団です。

また、次の写真は、目を隠すことを条件に撮らせてもらったものだそうです。

lbnt-thrw-kbyr-nd-lhnjrny2.jpg

sr-mn-lhnjrny2.jpg

うーん、どこからどう見ても、普通のエジプト人です。

エジプトのジプシー(ハンガラニーヤ)というのは、普通のエジプト人にとっても謎の存在で、名称は聞いたことがあるけど、いったいどんな存在なのかよくわからない、という感じのようです。

そうした一般エジプト人の目線にたった興味深い記事を二つみつけたので、訳出しておきます。

【記事1】ハンガラニーヤالهنجرانية:窃盗は誇り、スリを拒絶した者は死刑

メディアにはしばしば、「ハンガラニーヤ」による犯罪についての記事が載るが、ハンガラニーヤの容疑者の殆どが女性であり、その犯罪が窃盗とスリであることをのぞいて、その詳細な情報は殆どない。そこで記者は、危険をおかして、ハンガラニーヤの実態に迫ることにした。

まずは彼らの捜索から開始。彼らはカイロ市内では、マタリーヤ、ザイトゥーナ、イマーム・シャーフィイー、バサーティーンといった地区にまとまって暮らしている。しかし、彼らは彼らだけの非常に閉鎖的な社会で暮らしている為、詳しいことはわからない。

記者があるとき、イマーム・シャーフィイー地区のカフェにいたところ、そこの主人がそのカフェに座っていた1人の人を指差し、「彼がハンガラニーヤだ」と言った。彼は当初、インタビューを拒否したが、謝礼金と引き換えにそれを引き受けてくれた。ハンガラニーヤの世界には、彼らの手引きなしには入ることができないので、記者はそれを受諾。彼曰く、「窃盗はハンガラニーヤにとっては大きな誇りであり、窃盗をしない女は我々の元ではパンを与えるに値しないとみなされる」とのこと。

彼の自宅で、彼の妻にもインタビューすることができた。彼女は、「私はハンガラニーヤであることを誇りに思います」と言った。ハンガラニーヤの女性達は、窃盗を悪であるとは全く思っておらず、彼女らにとって悪とは、「売春を行う女性」や「麻薬を売る女性」であるそうだ。またハンガラニーヤたちはムスリムであり、普通のムスリムと同様に、礼拝をしたり、ラマダーンの斎戒を行うらしい。

ハンガラニーヤの女性達は、子どもの頃から盗みの技術を学び、まず市場で果物を盗むことから始め、その後は混雑した場所で現金を盗むこと、その後は金(ゴールド)を盗むことへとステップアップしていく。彼女らの盗みの能力は、彼女らの結婚するときの婚資金を決定する主要要素になる。

ハンガラニーヤは何でも盗むが、特に公共交通機関の中で、女性の装着している金の腕輪やネックレスなどを、切断して盗むことで知られている。貴金属店で金を盗むこともある。

各地のハンガラニーヤの一族には長老がおり、記者はマタリーヤ地区のハンガラニーヤの長老をたずねた。70歳になる長老は、アラブ世界各地にハンガラニーヤが住んでおり、特にシリアとヨルダン、エジプトに多いこと、彼らは夏場、人の多く集まる海岸エリアで窃盗をしたり、ハッジの時期にサウジアラビアに行きそこで窃盗をしたりもすること、などを語ってくれた。

また長老によると、ハンガラニーヤは彼ら独特の隠語を持っており、例えば、「ラームーハー」といったらそれは政府の意味で、「ラームー」といったら警官、「シャブラ」といったら金、「ワードゥー」といったら現金、「マズナーラ」といったら時計をそれぞれ意味するそうだ。

またハンガラニーヤは盗みの能力によって名称が異なり、一番下のレベルのハンガラニーヤは「農民」と呼ばれ、混雑した場所でしか盗みを行うことができないが、ナッシャーラ(卓越したスリの意味)になるとどんな場所でも盗みを行うことができる。

潜入取材記事、結構面白いです。私も全く知らない世界なので、久々にほ〜っと感心させられた(?)記事でした(もう3年前の記事ですが・・・笑)。ハンガラニーヤもムスリムなんですねぇ。でも売春は悪で窃盗は善、というかなり独特の道徳観を持っているというのが興味深いです。

【記事2】虐殺事件でハンガラニーヤの世界が明らかに

ダールッサラーム地区(マアーディー近郊)で先日、ハンガラニーヤの二家族が窃盗の戦利品の分割を巡って殺し合いになり、8人が死亡するという事件が起こった。

しかしハンガラニーヤとはそもそも何者なのか?

ハンガラニーヤの長老のひとりである80歳の老人によると、ハンガラニーヤはダールッサラーム、マタリーヤ、バサーティーン、イズバトゥッハガーナ、イマーム・シャーフィイーといった地区に住んでいる。彼らは200年前にインドからエジプトにやってきた民族であり、かつてはひとつであったが、各地に散らばって住むようになり、それぞれが個別の一族の様相を呈するようになった。

長老によると、ハンガラニーヤの唯一の職業は窃盗であり、かつては女性だけが窃盗をし、男性はそれを支援するだけで他には何もしなかった。ところが革命後、治安の空洞化がおこったのに伴い、男性もまた窃盗を行うようになり、ハンガラニーヤは老若男女全てが窃盗を行うようになった。彼らの窃盗で有名なものとしては、マアーディーにあるカルフールの貴金属店から金製品を大規模に窃盗した事件、リングロードを通る車を止めて強制的に通行料を徴収するという事件、タハリール広場でデモに参加している人々からスリを行う事件などがあげられる。

ハンガラニーヤのある女性によると、盗みは彼女らのなかでは誇りとされ、盗みを拒否したり、または一族以外の者と結婚したりしようとすると、死刑にされる。

ハンガラニーヤでは女の子が誕生すると大きな喜びを持って迎えられる。なぜなら女の子は、一族の宝とみなされるからだ。女の子は10歳になると盗みの技術を教えられ、まずは市場で果物を盗み、次に現金、次に金を盗むことを学ぶ。


革命後は男のハンガラニーヤも窃盗するようになったこと、マアーディーのカルフールという私もしょっちゅう買い物に行く所が彼らの活動場所(?)のひとつであることなどがわかって、これまたへーっと感心させられる記事でした。

ハンガラニーヤは彼らの主張するところによるとインド起源だそうで、やはりロマと同じ系統のようなのですが、他のエジプト人との結婚を掟で禁じているわりにはなんでこんなに見た目がエジプト人なんでしょうねえ?歴史の過程で、そういった掟が守られなかった時期があったのかもしれません。

特有の閉ざされた社会で生きてはいても、カフェのくだりにあったように、近所の人は「あいつはハンガラニーヤだ」と知っているわけで、なんというか、一種のバルタゲーヤみたいな存在なのかもしれません。

いやぁ、いろいろ想像は膨らみます。個人的には久々にかなり面白いネタでした。
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プロフィール

 飯山陽

Author: 飯山陽
イスラム思想研究者。専門はイスラム法。都内の大学でイスラム思想を教えていましたが、現在はエジプトのカイロ在住、メディアの仕事をしています。
イスラム国に関しては別ブログ「どこまでもイスラム国」をご覧ください。

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