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ピラミッドとスフィンクスを破壊せよ

ムルガーン・サーリム・エルゴハリー師الشيخ مرجان سالم الجوهريは一昨日(11月10日)、テレビ番組に出演し、「ピラミッドとスフィンクスをはじめとする、エジプトにあるあらゆる偶像を破壊しなければならない」と述べました。



ドリームという衛星チャンネルで夜10時から放送している「夜10時」(そのまんまですけど・・・)という番組内でのことです。「夜10時」はもともと、モナ・エッシャーズリーという女性がアンカーをしていたエジプトの大人気番組だったのですが、モナがmbcというチャンネルに引き抜かれ、今はワーイル・エルイブラーシーというおじさんがアンカーをつとめています。

つまりムルガーン師は、エジプトでそこそこ視聴率の高い番組に出演して、ピラミッドを破壊せよ!と呼びかけた、というわけです。

ムルガーン師というのは、いわゆるジハード系サラフィー主義者で、エジプトのメディアではジハード系サラフィー主義السلفية الجهاديةのリーダー格のひとりとしてとりあげられることの多い人です。かつてインタビューをしたことがあるのですが、かなり・・・な人です。

ちなみに、彼の名前のمرجانというのは、正則アラビア語で読むと「マルジャーン」なのですが、エジプトではこれを「ムルガーン」と読みます。全然関係ありませんが、私がよく買って食べる金目鯛も同じく、「ムルガーン」という名前です・・・。

彼曰く、「ムスリムは神の法の教えを適用する義務を負っているのであり、その教えには偶像を破壊すべきだとある。だからこそ我々は、アフガニスタンで仏陀像を破壊したのだ」、とのこと。彼はもちろん、アフガニスタンでのジハードを経験しているわけですが、彼の発言を文字通りにうけとれば、彼も2001年のバーミヤンの仏像爆破に加担した、ということなのでしょうか?

司会のイブラーシー氏が「もしあなたたちが政権をとったなら、スフィンクスやピラミッドやあらゆる偶像を破壊するのですか?」とたずねたのに対し、ムルガーン師は次のように答えています。

「あらゆる偶像は、もし過去に崇拝されていたり、現在世界でただ一人でもそれを崇拝している人がいたりするならば、破壊しなければならない。我々であれ、他の誰かであれ、とにかく破壊しなければならないのだ。」

イブラーシー氏はさすがにジャーナリスト出身者らしく、もう一度念を押します。

「つまりあなたたちは、スフィンクスとピラミッドを破壊する(つもり)なのですか?」

これを肯定して、ムルガーン師は続けます。

「そうだ、我々は破壊するつもりだ。もしそれら(スフィンクスとピラミッド)が過去に崇拝されていたとするならば、それ(破壊すること)が義務なのだ!!」

番組に一緒に出演していたジャーナリストのナビール・シャラフ氏は、ムルガーン師の発言に対して、「アムル・ブン・アルアースだってエジプトの偶像を破壊しなかったし、今、偶像を崇拝している人なんて誰もいない。その上、スフィンクスとピラミッドは人類の遺産であり、エジプト人全ての所有に属するものでもある。私たちは、それらを破壊しようとする人、そうした行為を決して許しはしない」、と反論しました。同じく番組に出演していた、チュニジアのナフダ党の副党首ムールー師も、「崇拝の対象となっていない偶像を破壊する必要はない」と反論しますが、ムルガーン師はそんな反論などどこ吹く風、持論を全く曲げません。

番組後、エジプト各紙が改めて彼にインタビューをしているのですが、例えばタハリール紙に対しては、「我々はピラミッドとスフィンクスだけではなく、将来的に崇拝の対象となりうる偶像や、過去に崇拝の対象とされていた偶像全ての破壊を目標としている」と述べ、エジプト大統領ムルスィーに対しても、「ムスリムの統治者は、カアバ神殿にあった360体の偶像を破壊した神の使徒ムハンマドにならって、ピラミッドやスフィンクスといった偶像を破壊しなければならない」と提言しています。そしてタハリール紙の記者に対しては、「あんたはムスリムなのに、ピラミッドの破壊に反対している。なぜか?それはあんたが、神の法を知らないからだ。そんな人間に対して、我々はどう対応すればいいというのか?我々はあんたたちに聞きたい。私の言葉は、神の法にかなったものか、それともそうではないのか?」、とすごんだそうです。

全ての偶像が破壊対象だとすると、ピラミッドやスフィンクスといった考古学的価値のある遺物だけではなく、映画や演劇はもちろんのこと、エジプト中のあちこちに貼られているいろいろな人のポスターや、子どもも大人も大好きなキャラクターグッズの数々といったありとあらゆるモノが破壊対象になってしまいます。

そしてムルガーン師の発言は、確かに「イスラム法的に正しい見解」である、という点が厄介です。しかしイスラム法的には、「偶像を破壊せよ」というイスラム法の規定を現在のピラミッドやスフィンクスに適用するのを回避するべきである、という見解を導出することも可能です。このあたりがわかりづらいのですが、これこそがイスラム法の特徴です。

番組でムルガーン師は、「シャリーアは立法の主たる源などではなく、立法の唯一の源である。人々はなぜ、そのことを恐れるのだ?神の法を恐れる必要などどこにもない!!」と強調しています。確かにこの言にも一理あるのですが、シャリーアというのは目に見えない神の法だからこそ、それを誰がどう解釈するかが非常に重要で、非ムスリムである私からすると、シャリーアが彼のやり方で解釈され適用されたらやっぱりこわい・・・です。

2001年3月にバーミヤンにある二体の石仏が爆破されてから、11年。2001年は911事件がおこり、その後いわゆる「テロとの戦い」が始められた、歴史に残る年です。

「エジプトのピラミッドとスフィンクスが、イスラム過激派によって破壊されました」というニュースを発信する日がこないことを、祈るばかりです。

ムルガーン師のこの発言を受けてかどうかはわからないのですが、おそらくそのせいで、今日から治安当局はギザのピラミッドやルクソールといった遺跡エリアの警備を強化し、警戒にあたっているそうです。
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プロフィール

 飯山陽

Author: 飯山陽
イスラム思想研究者。専門はイスラム法。都内の大学でイスラム思想を教えていましたが、現在はエジプトのカイロ在住、メディアの仕事をしています。
イスラム国に関しては別ブログ「どこまでもイスラム国」をご覧ください。

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