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「夫は不倫妻を殺害してもよい」論争

イスラム諸国ではよく、ある行為がイスラム法的に合法か違法かをめぐる論争がおこるのですが、エジプトももちろんその例外ではありません。

このところ頻繁に話題にのぼるのが、ダアワ・サラフィーヤという老舗のサラフィー主義組織の副指導者で、同組織のイデオローグであるヤースィル・ブルハーミー師のファトワーです。

ブルハーミーは今年の4月23日に、「夫は妻が恋人と共に裸の状態でいるところを見ただけでは両者を殺害してはならないが、両者の陰部が結合しているところを目撃した場合にはその限りではない」というファトワーを発行し、それに対する批判が相次いでいます。

ファトワーというのは、(もう何度も書いた気がしますが・・・笑)イスラム法学者がある事柄について、イスラム法的にどのように判断されるかを述べる「見解」で、単なる「見解」なので、それ自体は強制力も執行の義務もありません。

かつて近代法導入以前に、イスラム法による統治が行われていた時代には、裁判官が裁判を行う際に、イスラム法学者にファトワーを求めて、それに立脚した判決を下したり、またより一般的には、広く信徒たちが自分たちの抱える問題を解決するためにファトワーに頼るということが行われていました。

翻って現在はどうかといいますと、エジプトの場合はファトワーを発行する公的組織や、そこのトップである大ムフティー(ファトワー発行者)が公的に任命されている他に、ブルハーミーのような著名法学者がファトワーを乱発して、メディアがそれを取り上げて話題になったり、信徒たちがそれを行動指針にしたり、あるいは冷ややかな目で見たり、笑いものにしたり・・・と、反応は様々です。

ブルハーミーはここ数年だけでも、かなり(現代社会的には)奇抜(?)なファトワーをあれこれ発行しているのですが、その一例が以下。

2012年9月26日 イスラムという宗教は、女子の婚姻最低年齢を定めておらず、セックスさえできればよいとしているので、9歳や10歳の女子が結婚することも何ら問題ではない

2013年4月15日 ムスリムは春香祭(イースター)の際に、リンガ(ニシンの塩漬け)を食べたり、春香祭を祝ったりしてはならない

2013年9月14日 ムスリム男性は、キリスト教徒女性の所有している財産や、彼女の肉体、あるいは美しさのみに惹かれるという理由だけで、彼女と結婚することができ、その際、自宅において彼女の安全を担保する必要はない

2013年11月23日 妻は夫のセックスの要請を断ってはならず、断った場合、それは不服従行為として離婚要因を構成する

2014年1月20日 女性はデモに参加してはならない

2014年3月2日 コプト教徒を公職や行政職に任命してはならない

2014年3月11日 妻には夫の客人をもてなす義務はない

2014年4月17日 姦通の証拠として現場のビデオを撮影したとしても、目撃証人がいないかぎり、それは証拠として採用されない

「(現代社会的には)奇抜なファトワー」と書いたのは、古典的なイスラム法的には奇抜でも何でもなく、普通の解釈だったりする・・・ことを勘案したのですが、現在の、特にエジプトの場合にはアズハルに属する法学者たちは、古典的イスラム解釈を現代社会に適応したかたちで解釈すべくいろいろ苦肉の策を展開しているわけでして、そこへきて、ブルハーミーのように「イスラムでは女はセックスさえできれば9歳で結婚してもいいことになっている」とか言う輩が出てくると、はなはだ迷惑なわけです。

それはもちろん、エジプトの民法はどうなる?!、子どもの人権、女性の人権無視じゃないか!!となってしまうからでして。

例えば、最初に紹介した「夫は妻のセックス現場を目撃したら、妻と恋人を殺してもいい」というファトワーについては、アズハルの法学者たちはこぞって、これは無効なファトワーであり、社会の秩序を乱すだけのインチキファトワーなので、いかなる信者もこんなものに惑わされてはならない云々と述べています。

今のエジプトにおいては、どんな事案であれ、きちんと裁判所で裁判が行われるべきであり、個人が個人を殺してよいなどということはいかなる状況においてもありえない、とか、こんなインチキファトワーは国家の治安と安定を脅かすので、国の取締の対象とすべきだ、なんて意見を述べている学者もいます。

ダアワ・サラフィーヤはヌール党という政党を作って政治活動も活発に行っている団体で、エジプト社会への影響力が実際にある組織です。

アズハルの学者達が、口を酸っぱくして、「ブルハーミーに騙されるな!」といっても、ブルハーミーのファトワーをありがたく拝聴し、そうかそうかとそれに従う国民も一定数いるのがエジプト。

ちなみに、今日のワタン紙がブルハーミーのファトワー特集を組んでいるのですが、そこには精神科医のコメントも掲載されていて、マナール・ザカリヤーという精神科医は、「サラフィーの人たちの考え方の中には、精神科的に治療すべきものが含まれています。それに彼らは、女性はセックスの対象にしかすぎない、という考え方をそもそも改めるべきだと思います」と述べています。

これを読んで、ちょっと失笑してしまった私・・・。

やっぱり面白い国です、エジプト。
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プロフィール

 飯山陽

Author: 飯山陽
イスラム思想研究者。専門はイスラム法。都内の大学でイスラム思想を教えていましたが、現在はエジプトのカイロ在住、メディアの仕事をしています。
イスラム国に関しては別ブログ「どこまでもイスラム国」をご覧ください。

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