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エジプト大統領の三権独占

先週の木曜日(11月22日)、エジプト大統領のムルスィーは、「大事な発表をする」と前うちしておいて、実際にひじょーーーーーーーに大事な発表をしました。

彼が行ったのは「新憲法宣言」で、これは何かというと、実質的には現行の憲法の修正を宣言するもので、乱暴な言い方をすれば部分的に新しい憲法の起草をしたようなものです。エジプトでは去年の革命以来、既存の憲法を「憲法宣言」のかたちで次々に修正して使う、というその場しのぎ的状況が続いています。

今回、彼が「つくった」憲法の条項のうち、私が特に気になるのは次の点です。

【第2条】共和国大統領による憲法宣言、および彼の行った立法および決定は、新憲法が制定され、新たな人民議会が選出されるまでは、最終的な決定とされ、それに対するどのような抗議・不服の申立ても認められない。またこの決定に反対したり、その執行を妨げたり、それを無効にすることも、許されない。

これはつまり、「大統領の決定は無条件的に絶対」だという規定です。

エジプトの立法権は、もともと議会がもっていたのですが、

議会解散→軍部が立法権掌握→大統領の憲法宣言(8月12日)によって大統領が立法権掌握

という流れで、現状ではムルスィーが持っていました。まあ、この8月段階で、ムルスィーは立法権と行政権を独占したわけで、この時点で、あーーーーー、また独裁化がはじまったなー、と思ったのですが、今回の憲法宣言はこの独裁の総仕上げのようなものです。「どのような抗議も」というのは、実質的には司法を指しており、司法は大統領決定に抗議できないと定めた、ということは、つまり司法権もムルスィーが握ることになった、ということを意味します。

民主主義の原則→三権分立
エジプトの現状→大統領による三権独占

これはひじょーーーーーーーにヤバい状況で、例えばムルスィーが、「はい、じゃあ今日からシャリーア適用ね」といって既存の成文法を全て破棄してしまうことも可能なわけです。そうしたら、まあ、私なんかは啓典の民ですらないので、殺されるか、追放されるか、よくてマーリク派やハナフィー派的解釈で啓典の民に準ずると認められて人頭税を払ってエジプトにいさせていただくか・・・という感じ?

「今日からオレがカリフね」、も可能です。あ〜それはないか。今日からムハンマド・バディーウ(同胞団のムルシド)がカリフね、ならありうるなあ・・・。

もっと卑近な例をあげれば、「はい、じゃあ今日からお酒売るの禁止ね」といってカイロから酒を一掃してしまうことも可能ですし、「今日から水着で泳ぐとか、禁止ね」といってビーチを閉鎖してしまうことも可能です。

しかも、誰一人、司法ですら、この決定に抗議することはできないのです。

完全なる独裁者・・・です。

しかもこの決定は、ムルスィー曰く、「エジプトの政治的、経済的状況を安定させ、革命の目的を達成するために必要な決定」だ、とのこと。大統領選挙のときもそうでしたが、同胞団は何かというと「革命の護持者」を自任するのですが、まあ、こういっておけば大概の反論は煙にまけるだろう、という判断がみえみえで、イラっとします。

もちろんこの憲法宣言にはエジプトの政治勢力はこぞって反対しており、(なつかしの)革命青年たちもでばってきて、デモや座り込みなどを行い、衝突も発生しています。

それに加えて、さらにこのムルスィーの「完全性」にケチをつけているのが、サラフィー勢力です。例えば、ダアワ・サラフィーヤの報道官であるアブドゥルムヌイム・アッシャハート師は、こんなふうに言っています。

「我々は憲法宣言の第2条に反対する。なぜならイスラムでは無謬な人間は使徒たちをおいて他にいないとされており、ということは、どんな人間であれ、その人の下した決定に誰一人、どんな方面からも抗議が許されないなどということはあってはならないことで、この決定は神の法に反しているからだ。」

彼らからみると、この憲法宣言は「ムルスィー=無謬」宣言、とうつるようで、この点がどうしても納得いかないようです。

またジハード系サラフィー主義者のリーダーの一人、ハーゼム・アルマスリー師は、エジプト各地で大統領の憲法宣言に反対するデモが発生したり、大統領の属する自由公正党の建物が放火されたりしているのは、「自由公正党の人々と大統領が神の法に反しているからだ」なんて言ったりしています。彼らにとっては、この憲法宣言が神の法に反しているだけでなく、ムルスィーが展開しているシナイ半島でのジハード主義者狩りも神の法に反しているとみえるようです。

更に、今回の憲法宣言は、

【第5条】司法はシューラー議会や憲法起草委員会を解散させることはできない

とも規定しており、このまま現状の憲法委員会の作った憲法が、(一応国民投票にかけられて・・・)エジプトの新憲法になりそうな感じでもあります。

エジプトの独立系各紙は連日、この憲法宣言に対する批判記事を掲載していて、例えば今日のワタン紙には、ムルスィーとムバラクを比較して、ムルスィーの方がよっぽど独裁者で専制者だと酷評しています。

昨日、エジプトの裁判官たちが会見を開き、この憲法宣言は承服しかねるとして裁判活動を停止すると発表しました。裁判停止は明後日27日からで、多方面にストライキを呼びかけてもいます。また27日には、同胞団もムルスィーの決定を支持するデモを予定しています。

他方、これまでの世論調査ではムルスィーの支持率は結構高く、エジプトの人々は一般に「強い大統領」を求める傾向にあるので、案外この憲法宣言は歓迎されてるかもな、なんて思ったりもします。もちろん、政治意識の高い都会の人たちは大反対するでしょうが、エジプトには「三権分立」なんて概念について考えたりしない、素朴な生活を送っている人々がその何百倍?何千倍?もいるのが現状なので。

しばらくは状況を注視していようと思います。
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プロフィール

 飯山陽

Author: 飯山陽
イスラム思想研究者。専門はイスラム法。都内の大学でイスラム思想を教えていましたが、現在はエジプトのカイロ在住、メディアの仕事をしています。
イスラム国に関しては別ブログ「どこまでもイスラム国」をご覧ください。

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