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国民投票による同胞団支配の絶対化

先日、エジプトの新憲法案に対する国民投票が実施され、昨日その結果が発表されました。予想通り、賛成票が反対票を圧倒的に上回っています。

賛成票 約1.000万 (63.8%)
反対票 約600万 (36.2%)
投票率 32.9%

投票率が異常に低いのが気になりますが、投票率が低いからといって国民投票自体が無効になるといった規定はないので、このままこの憲法案が承認されて、エジプトの新しい憲法として制定されることになります。

この憲法案は、「イスラム主義者が中心になって草案した」とされていますが、内容的には別にイスラム主義的な要素はありません。例えばよく話題にのぼるイスラムという宗教の位置づけについては、前憲法とかわるところがありません。具体的な条文は、こんな感じです。

第2条 イスラムは国教であり、アラビア語は公用語である。またイスラムのシャリーアの原則は、立法の主たる源である。

主権についても、イスラム主義の信条である「神の主権」は掲げられておらず、「人民主権」とされていますし(第5条)、政治システムは「民主主義」とされています(第6条)。特定の宗教に立脚した政党の設立も禁止されています(第6条)。

イスラム関係の条文で気になるのは、以下の点です。

第219条 イスラムのシャリーアの原則はその普遍的論拠と法源および法学の原則を含む。そしてその(シャリーアの原則の)源となるのは、スンナ派諸法学派の解釈とする。

これを第2条とあわせよむと、立法の主たる源となるのはイスラム法の原則で、何をイスラム法の原則とするかはスンナ派の学者が判断する、ということになります。

キリスト教徒やユダヤ教徒は、宗教に関することや家族法に関することは、各々の宗教法に従って判断してよいことになっていますが、その他の事案については基本的にはイスラムに立脚して判断される、ということです。まあ、国教もイスラム教ですし。

大統領は、任期こそ2期8年までと制限されていますが、その権力は相変わらず絶大で、旧憲法の規定とさほどかわるところはありません。

そして今後のエジプトを占う上で気になるのは、以下の条文です。

第150条 共和国大統領は国家の利益に直結するような重要な事案に関しては、有権者に対して国民投票を呼びかける権利がある。そして国民投票が呼びかけられた場合には、有権者の各々に対して投票が義務づけられる。また、国民投票の結果はあらゆる状況において、国家の全統治機構に対して義務的に適用される。

つまり大統領は、どんな問題であっても、国民投票にかけて賛成票の多数を得ることさえできれば、思いのままに判断を下すことができる、ということです。

国民投票にかけるとどんな結果になるかというのは、今回の憲法案に対する結果がその好例です。つまり、投票率は低く、賛成票が多い、という結果になる、ということですが、今後しばらく、おそらくどんな問題についても、ムスリム同胞団が統治の中枢を占めている限り、国民投票が行われるたびに、同じ結果になるだろうということが予測されます。なぜなら、

1)投票をめんどくさいと思う人が多くなる→投票率が下がる→同胞団の組織力が相対的に力を発揮する
2)同胞団が「イスラム絶対主義」を掲げている以上、エジプト国民の90%を占めるムスリムは同胞団の主張にノーと言う筋合いがない

からです。「お前、この提案にNoと言うことは、イスラムにNoと言うこと、イスラムを捨てることになるんだぞ」と言われたら、殆どのムスリムはYesと言うしかありません。それに殆どのムスリムは、エジプトの独立系新聞が書き立てるような同胞団の野望や腹黒さなどには興味がなく、同胞団は善人の運営する善の組織であると素朴に信じています。

このままスムーズにことが運べば、2ヶ月以内に議会選挙が行われ、また同胞団が圧勝し、同胞団は晴れて立法機関と行政機関を正統な手続きを経て支配することになります。

同胞団はエジプトにイスラム国家を樹立し、最終的には世界をイスラム化して、同胞団がそれを支配することを目標にしていると思われますが、本当は民主主義を嫌悪している彼らがその目標をいかに「民主的」なかたちで実現していくかが、今後の見物・・・だと、私は思います。
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プロフィール

 飯山陽

Author: 飯山陽
イスラム思想研究者。専門はイスラム法。都内の大学でイスラム思想を教えていましたが、現在はエジプトのカイロ在住、メディアの仕事をしています。
イスラム国に関しては別ブログ「どこまでもイスラム国」をご覧ください。

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