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エジプトの珍ユダヤ陰謀論

エジプト人は、陰謀論が大好きです。

大好きというか、何ごとも陰謀論で片付ける思考法が脳髄にまで浸透しているようで、一般の人々は言うに及ばず、新聞やテレビでも陰謀論がまことしやかに語られるのが普通です。

とりわけエジプト人が好きなのは、ユダヤ陰謀論です。

ユダヤ陰謀論といえば通常は、「世界のあらゆる出来事を背後で操っている世界の真の支配者はユダヤ人である」というものですが、エジプト人は「そのユダヤ人が特に執拗に狙っているのがエジプトである」と思い込んでいます。だから、何かというと「これはユダヤ人の仕業だ!」とか、「モサドの仕業だ!」と大の大人が本気かつ真剣に主張し、その主張にエジプト人の大多数が賛同するのです。

ことの真偽やその主張の根拠なんて、誰も問いません。陰謀論そのものが、大好物だからです。

例えば2011年にエジプトの海岸で観光客がサメに襲われる事件が頻発した際には、南シナイ県の知事や観光省が「このサメはモサドによって訓練され、エジプトに送り込まれたものだ。モサドはエジプト観光に打撃を与えようとしている」と大まじめに主張しました。

いやいや、サメ訓練して人を襲わせるようにするとか、無理だから・・・それになんでそんなめんどくさいことしなきゃいけないわけ???と普通こんな珍陰謀論を否定する方向で思考が進みそうなものですが、エジプト人の場合、思考のベクトルは真逆に向きます。「最近、GPSをうめこまれたサメを捕獲した」とかいう話が別の所から飛び出し、「ほらやっぱりモサドの陰謀じゃんっ!!」「やっぱりエジプトは狙われてるんだっ!」となるわけです。

2012年には、イスラエルの元外相でもある女性政治家ツィピ・リブニが、アラブ諸国を脅迫するために多数のアラブ人と寝たと自ら認めた、という記事がアルマスリ・アルヨウム紙に掲載され、「ほれ見たことか、ユダヤ人はやっぱり頭がおかしい」みたいな世論が生まれました。その後、同紙はこの記事の内容はガセでした、ごめんなさい、と訂正記事を載せたのですが、人々の心に残っているのはガセの内容の方だけでしょう。

今年になってから流行したのは、2月にイランのアフマディネジャド大統領がエジプトに来たことと関係しているのでしょうが、「シーア派の創始者はユダヤ人」という論です。

ある時、うちの運転手が、「知ってるか?シーア派をつくったのは、本当はユダヤ人なんだぞ」と言ってきたので、心の中では「なんだその珍説は?!」と思いつつ、「えっ?!そうなのっ???全然知らなかった・・・詳しく教えて!」とお願いすると、「よし、それじゃあ、いい本を持って来てやる」と言って、彼が持って来てくれた本がこちら。

DSC05044.jpg

著者は、ナジャフのウラマーであるアッサイイド・フサイン・アルムーサウィーالسيد حسين الموسويなる人だとされていますが、これは偽名みたいです。一説によると、この人はナジャフ、つまりイラクのシーア派本拠地のひとつに住んでいるので、恐くて名前を明かせないから、とのこと。

というのもこの本で彼は、「自分はシーア派を棄てた!!」と転向宣言しているからで、こんなことがバレたら、シーア派の連中に何されるかわからんから、ということのようです。

彼がシーア派を棄てた理由はいくつかあるのですが、最も重要なのは、

「シーア派を創始したのはアブダッラー・ブン・サバアعبد الله بن سبأというイエメン出身のユダヤ人であり、彼はイスラム共同体を分裂させ、その中に敵意を植え付ける為に、シーア派を創始したということを知ってしまったから」

という理由です。

あー、なんかこの名前、聞いたことあるなぁと思ってちょっと調べてみたら、実在していたかいないかで研究者の意見が割れている人でした。ホジソンM. G. S. Hodgsonとか、バーナード・ルイスBernard Lewisとか、マーデルングWilferd Madelungといった欧米の歴史・思想研究者だけでなく、ターハ・フサインも彼について書いているのですが、彼らの研究&意見を総合すると、

 そもそもアブダッラー・ブン・サバアなる人物が実在したか、非常に怪しい
 実在していたとしても、ユダヤ人だったかどうかは疑わしい

ということのようです。

ところが、同書の著者は、「シーア派はアブダッラー・ブン・サバアは実在しない人物だなんて言っているが、これはウソだ。ユダヤ人である彼こそが、シーア派の創始者なのだ」の一点張り。

その他に、彼がシーア派を棄てることにした理由としては、

・シーア派があがめる「 預言者ムハンマド一族أهل البيت」たち自身が、シーア派に立腹していたことがわかった
・シーア派が徴収する五分の一税الخمسは、違法な税であることがわかった
・シーア派が認めるムトア婚(快楽婚)は、違法であることがわかった
・シーア派は同性愛を認めているが、それは違法であることがわかった

等々が挙げられています。

彼によると、「私の一族を含むイラクの部族の多くはもともとスンナ派だったが、150年前にイランからシーア派宣教師がやってきて、その言葉にたぶらかされてシーア派に転向してしまった」そうであり、彼は現在イラクでシーア派を信奉している諸部族に「元の信仰(スンナ派)に回帰せよ」と促しています。

まずこの著者が本当は誰なのかわからないという段階で、その内容の真偽を疑ってかかるべきだと思いますし、書かれている内容はスンナ派がシーア派を「偽信者」と批判する際の常套句のオンパレードにすぎないわけですから、スンナ派の人が書いたんじゃないの?と想像がつきそうなものですが、うちの運転手は、

「これは元々シーア派のウラマーだった人が書いたものだから、内容は信頼に値する」

と自信たっぷりに言っていました・・・。

しかも、

「ユダヤ人がイスラム共同体を分裂させるために作ったのがシーア派だから、イスラエルとイランは争っているようにみえて、実は協力関係にあるんだ。奴らの目的は、エジプトを始めとするスンナ派世界を弱体化させ、イスラエルとイランの覇権を確立させることにある。これこそが今の世界の真実なんだ!」

と熱く語っていました・・・。

ほらここでやっぱり出てきました、「エジプトはユダヤ人に執拗に狙われている」論。エジプト人はこの論に取り憑かれているので、この論を立証(?)することのできる証拠(?)であれば、どんなものにも飛びつくのが彼らの習性ですから、その証拠の真偽なんてどうでもいいのです。

・・・。

今後、またどんなユダヤ陰謀論が飛び出してくるのか、密かに楽しみにしているのは私だけ?・・・ではないはずです(笑)。
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プロフィール

Author: 飯山陽
イスラム思想研究者。専門はイスラム法。都内の大学でイスラム思想を教えていましたが、現在はエジプトのカイロ在住、メディアの仕事をしています。
イスラム国に関しては別ブログ「どこまでもイスラム国」をご覧ください。

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