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エジプトのムトア婚(一時婚)

ムトア婚زواج المتعةというのは、直訳すると「快楽婚」であり、日本語では意訳で「一時婚」といったりする結婚の形態です。男女の合意のもとに、期間限定で結婚するというこのムトア婚を、イスラムのシーア派では認めていますが、スンナ派では(基本的に)禁じています

エジプト人は90%ほどがイスラム教徒で、10%ほどがキリスト教徒なのですが、イスラム教徒のほとんどがスンナ派ではあるものの、一部シーア派ムスリムが存在しています。

彼らの存在は2011年の革命以前には表面化することは殆どありませんでしたが、革命後、彼らは急に活発な活動を開始しました。非常にマイナーなネタですが、これはエジプト革命後の大きな変化のひとつです。エジプト全体でいったいどれくらいのシーア派ムスリムがいるのかはよくわからないのですが、彼らはカイロ郊外に3つほどモスクを持っているとされ、スンナ派ムスリムをシーア派に「改宗(?)」させるための活動や、政治活動を活発に行っています。2011年11月に、シーア派政党「解放党حزب التحرير」は党としての公的な認可を申請したのですが、その時は認可されなかったものの、彼らの活動は現在も継続中です。

エジプトの新聞のいくつかは、「シーア派がエジプトをのっとろうとしている!」という危機感をあおる主旨で、こうしたシーア派の活動を継続的に取り上げているのですが、今日はワタンالوطنという新聞に「20ヶ月間だけムトア婚をしてSMSで離婚された女性」についての記事が掲載されていました。この女性はカイロのハダーイクルウッバحدائق القبة地区に住むスンナ派ムスリムで、夫に先立たれた未亡人だそうです。そして彼女とムトア婚した男性は、エジプトのシーア派の指導者のひとりで、政治活動もしていたとされます。両者とも本名は伏せられています。

非常に興味深いので、彼女のインタヴューを以下にざっくり訳しておきます。

Q 「どうやって彼と知り合ったのですか?」

A 「お見合いおばさんالخاطبةに、いいお相手がいるとすすめられたのです。相手は有名なジャーナリストだということで、おばさん同席のもと、その男性と一度会いました。」

Q 「どうして彼と結婚することになったのですか?」

A 「結婚の決意をする前にもう一度会いたい、と彼から連絡があったので、一人で彼の事務所を訪れました。彼は私に前の夫がいつ死んだのかと尋ね、私の待婚期間عدةはとっくに終わっていると告げました。その後突然、彼はコーランの上に手をおいて『あなたは神の前において私の妻である』と宣誓するやいなや、私と夫婦関係を持ちました。私が『こんなのは結婚じゃない』と言うと、彼は『いや、これはれっきとした結婚だ』と言いました。後日、彼から電話があって、また事務所に来てほしいというので、私は断り、きちんと結婚契約を結んでほしいと言いました。すると彼はそれを拒否し、電話を一方的に切ってしまいました。」

Q 「その後、どうしましたか?」

A 「私は彼に電話をしましたが、彼は電話番号を変えてしまっていました。その後、彼から会いたいと電話があったのですが、私は断り、『私はみんなと同じくスンナにのっとったちゃんとした結婚がしたいの。シーア派の結婚なんか嫌だわ』と伝えました。」

Q 「ご自身がムトア婚の犠牲になったと気づいたのはいつですか?」

A 「弁護士のところにいった時です。彼は私の結婚のための契約書と証人を準備していたのですが、私の話を聞いて、それがムトア婚だと教えてくれました。」

Q 「あなたはこの結婚が期間限定であることを知っていましたか?」

A 「はい。彼(結婚相手)自身が私に、この結婚の期間は20ヶ月だけだ、と言いましたから。」

Q 「あなたはこの結婚がシーア派のものであることを認識していましたか?」

A 「はい、その認識はありましたが、私はシーア派が何なのか知りませんでした。私が知っているのはイフワーンとサラフィーとキリスト教徒だけです。彼に尋ねると、シーア派というのは預言者ムハンマドの一族を愛する人々であるとだけ教えてくれました。」

Q 「彼との関係はどのくらい続いたのですか?」

A 「2ヶ月間だけです。その間、彼と会ったのは3回だけです。最後に会った時、彼は私に私たちは結局結婚していない、と言うので、その後、私は持っていた連絡先のひとつに電話をかけました。すると小さい男の子が出たので、私は『ママと話したい』といいました。彼女が電話にでると、彼女は私が彼の妻であることを認識したようです。すると彼が彼女から電話を取り上げ、『オレはお前なんか知らない』と言って電話を切りました。その後、彼から携帯電話のメッセージSMSが届いたのですが、そこには『あなたは離婚された』と書かれていました。」

Q 「彼はあなたに、彼の子どもを産むよう求めなかったのですか?」

A 「いいえ、その逆です。彼には既に子どもが複数いますので、彼はそれ以上の子どもを望んでいませんでした。だから私には、『私たちは快楽のためだけに結婚するのだ』と言っていました。」

Q 「彼は同じようなやり方で他にも結婚したことがあると、あなたに言いましたか?」

A 「私が知っているのは、彼には正式な奥さんがいて、その人はニカーブをかぶっているمنتقبةということ、彼女との間に三人の子どもがいるということ、彼女の前に二人と離婚しているということ、そしてムトア婚で私の前に三人と結婚したことがある、ということです。」

Q 「彼はあなたにシーア派への改宗を求めましたか?」

A 「いいえ。彼の奥さんもスンナ派だそうです。」

Q 「あなたの気づいた、彼の奇妙な行動は何かありましたか?」

A 「彼はイランとレバノンに何度も行き、その度に多額の資金を得てきているようでした。また彼は、とても奇妙な3つの大きな指輪をしており、そのひとつには(四代目カリフの)アリーの絵が描かれていました。また彼は、大汚جنبの状態のままでモスクに行ったこともあります。アーシューラーの日、彼は私の家にいたのですが、そのまま(つまり性交渉を行ってグスルをしないまま)フセインモスクに行こうとするので、私が驚くと、『神は我々をこのように創造なさったのだから、ふつうのことだ、問題はない』と平然としていました。また彼はハシーシュを吸い、お酒も飲んでいたのですが、『酒を飲んで礼拝することは、別にふつうのことだ』と言っていました。

Q 「最後に連絡があったのはいつですか?」

A 「新しい番号からSMSが送られてきて、そこには『あなたは神の前で私の妹である』と書かれていました。それで私は、彼は本当に私を離婚したいと思っていて、私は単なるムトア婚の相手であったのだと再認識しました。私は神のもとで正しい状態で生活したいと思っているだけです。」

インタヴューは以上です。その他にもイランではいろんな種類のムトア婚が認められていて、

1)お試し婚:男の主人と女のお手伝いさんの間で認められるムトア婚
2)出産婚:妊娠と出産だけを目的として性的関係をむすぶムトア婚
3)扶養婚:女性が一定期間扶養してもらう目的で行うムトア婚

なんかがある、とも書かれていました。

私は個人的にはシーア派シンパでもスンナ派シンパでもありませんが、この記事を読むと単純に、この男はひどい奴だな、と思ってしまいます。ムトア云々より以前に、「これって単なる強姦じゃん?!」と思う人は私だけではない・・・はず。この記事がどの程度真実を反映しているかは不明ですが、エジプトにおけるシーア派とスンナ派間にはこうした問題もあるのだろうということがわかっただけでも、非常に興味深かったです。

エジプト人に聞くと、みんな、シーア派って名前は知ってるけど何だかわからない、と言います。エジプトの学校には宗教の授業というのがあって、ムスリムはイスラム教、キリスト教徒はキリスト教についての授業を受けるのですが、イスラム教の授業ではそもそも、「イスラムにはスンナ派とシーア派がある」旨に全く言及しないそうです。スンナ派の人はスンナ派だけが正しいと思っているので、スンナ派が大多数をしめるエジプトでは、当然といえば当然のことです。従って、エジプト人の中には、「シーア派はイスラムじゃない」なんて言う人もふつうにいます。

日本でイスラムの授業をする際に、スンナ派とシーア派の二大宗派について言及するのが当然というスタイルでやってきた私としては、エジプト(の宗教の授業)においてはシーア派は存在しないことになっている、という事実に大変びっくりしたのを今でもよく覚えています。

シーア派の存在が顕在化してきた現在、今後の宗教の授業のあり方も気になるところです。

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プロフィール

 飯山陽

Author: 飯山陽
イスラム思想研究者。専門はイスラム法。都内の大学でイスラム思想を教えていましたが、現在はエジプトのカイロ在住、メディアの仕事をしています。
イスラム国に関しては別ブログ「どこまでもイスラム国」をご覧ください。

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